エピローグ

 その日の午後、あたし達6人はリファールの街を後にした。
 街道をこのまま下って行くと、ドレックノール・ザーン・ベルダインを経由してガルガライスにたどりつく。ドレックノールはなるべくなら立ち寄りたくないんだけど、通り道なんだから仕方ない。まぁ、あの街で宿泊するつもりなんて、誰にも無いと思うけど。

「何かワクワクしちゃうな。僕、リファールから出るの、初めて」

 アイリがいつもの様ににこにこしながら言う。思わず、つられて笑ってしまいそうな笑顔。特に、隣にいるカルザスなんて、先刻からアイリにつられているのか笑いっぱなしだ。つくづく、ブラコンだなぁって思う。

「あたしも、ガルガライスは初めて。暑いって聞くけど、どれくらい暑いのかしら?」
「”終わりなき夏の街”っていう別名を持ってるくらい、だな」

 リアンダの質問にティーが答える。でも、彼の答え方ではどのくらい暑いのかはよく判らない。やれやれ。
 ガルガライスはティーの故郷だ。やっぱり、冒険者稼業に足を突っ込んでいるとはいえ、故郷に帰るのは嬉しいらしい。いつもの様なそっけない言葉の中にも、嬉しさがにじみ出てる。

「とにかく、暑い所なんですよね?薄い服を買っておく必要があるでしょうかねぇ?」

 バートはいつも穏やかでマイペースな人。こっちのテンポが崩されてしまいそうだ。普通、ここで服の話が出るものかしら?…ま、うちのパーティは個性的な人ばっかりだから、自分のテンポなんて崩されっぱなしなんだけどね。

「じゃあ、ベルダインに寄って買い物でもしていく?あたし、ベルダインについてなら詳しいよ?」

 さり気なく突っ込んでみる。ベルダインはあたしの故郷だから、それなりには詳しいと自負している。
 もっとも、あたしは狩人の親父と一緒に森の中に居を構えていたわけだから、普通の街娘よりもベルダインの街にいた時間は短い。
 でも、長けりゃいいってモンじゃないしね。あまり街に行かない人の方がかえって詳しいことだってあるんだから。

「行ってみたいなぁ。フェルの故郷がどんな所か見てみたいし」

 真っ先に賛成したのはアイリ。屈託のない笑顔で、あたしの顔を真っ直ぐに見つめてそう言う。何だか、ちょっと照れてしまうわ。
 彼がそう言うならカルザスも反対はしないはず。なんせブラコンだしさ。

「あたしも賛成よ。新しい服も欲しいしね」
 リアンダは明るい笑顔で。

「俺も。どういう場所だったらお前みたいな女が出来るか、興味深いしなぁ」
「なぁに、それ?どういう意味よ!」
 ティーはいたずら小僧の笑い顔で。

「反対する理由はありませんね。僕もご一緒しますよ」
 バートはいつもの穏やかな微笑みで。

 残りの3人も同意してくれた。こうなれば、話は決まりだ。

「よぉ〜っし、じゃあまずはベルダイン目指して出発ね!」

 ほんの些細なきっかけで出会ったあたし達。でも今はこんなに上手くやっていってる「仲間」だ。
 今日もあたし達は夢を見る。6人が同じ、冒険の夢を。

  


フェルのプレイヤー、松川ちゃるのさんによるエピローグでした。
シナリオの最後で「次回の舞台はどこにするか?」という話になり、ガルガライス行きが決定したので書いたお話だそうで。
いかにも仲が良さそうで、いいですね(^^)。

ではでは、長らくのお付き合い、ありがとうございました。
「禁断の魔法花」、完結です。