「詩織〜!俺もきらめき高校に受かったよ!合格だぁ!!」
「ホント?凄いね!公くんっ!これでまた一緒だね」
「ああ。その・・・これからも宜しくな?詩織」
「もちろん。これからも宜しくね、公くん」

ん・・・・?これは・・・・・・。
懐かしいな。
公がきらめき高校に受かった時のことだ。
あの頃は、まだ全然頼りなかったのにね。
ふふふっ。
いつのまにか・・・・こんなに頼もしくなっちゃったんだから。

 

あなたとの思い出
Featuring Shiori Fujisaki  Presented by ヒサ

 

「あれ?詩織。起きた?」
「あ・・・公。うん。今、起きた」
「そっか。随分気持ちよさそうに寝てたな」
「・・・・・起こしてくれてよかったのに。寝顔見られてたなんて恥ずかしいわ」
「・・・・・何をいまさら」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・公のバカ

暖かな陽射しが、とても心地よくて、つい眠ってしまいそうになる春の午後。
満開の桜のあいだから、きらきら零れ落ちる光の雫。
私は公といつも一緒に中央公園に来ているけど、今日はいつもの中央公園じゃないみたい。

高校卒業から4ヶ月。
高校から大学に入学しても、私たちは何も変わらない。
公が隣にいるのが当たり前になってる。
でもね?私、ちゃんと分かってるのよ?
公が当たり前のように私に隣にいてくれることが、どんなに凄いことかって。
ちゃんと・・・・・・・分かっているんだから。

「公ったら、意地悪ね」

私は、隣で本を読んでいた公を、少しうらめしそうに見た。

「意地悪?何で?」

読んでいた本を膝に置いて、公がこっちに向き直る。

「だって、起こしてくれればいいのよ。・・・・・久しぶりに会えたんだもの」
「この日をあけるために、詩織だって結構無理したんだろ?俺は気にしてないよ。詩織といるだけで十分なんだから」
「公・・・・・」

公の優しさも変わらないね。
ちっちゃい頃のまんま。それが、とても嬉しく感じる。

「あのね・・・・公・・・」

そう言いながら、私は公のシャツの裾をつまんだ。

「ん?」
「あの・・・・寝ちゃってごめんね?ホント、私寝るつもりじゃなかったの」
「ああ。分かってるよ。だから、気にしてないって。寝てていいよ」
「え?嫌よ。だってせっかく会えたのに」
「でも・・・・・・俺と一緒にいるとき、無理なんかしてほしくない。言ったろ?俺は詩織が側にいるだけで嬉しいんだから」
「・・・・・・・公」
「だ・か・ら、寝てなさい」「・・・・・・・・ありがとう。ごめんね?」
「いいから。お休み」
「・・・・・・・うん」

そう言って、私はまた少しずつ意識が遠くなっていった。
ねぇ?公。
私、分かってるの。
あなたの側にいられる事が、
こんな日常があることが
とても凄いことなんだって。
分かっているのよ?

 

「ねぇ、公。覚えてる?私たち、前ココに来たことあるのよ」
「え?」
「やだ・・・覚えてないの?もう」
「ごっ、ごめん!」

・・・・・これは・・・・・あ、高校1年生の春に公と一緒に中央公園でデートしたときだ。
確か、池で溺れてしまった公を、私がおびえて見ていたって話をしたんだよね?
ね、覚えてる?
それでも、私は必死で助けの声を呼んでいたんだよ?
あなたを・・・なくしたくなかったから。あなたの悲しそうな、辛そうな声を聞きたくなかったから。
精一杯の声で、助けを叫んでいたの。

 

「きゃっ・・・・・・きゃぁぁぁぁーーー」
「しっ詩織ぃ!?何やってんだ?」

「あーあ。すっごく楽しかった♪」
「・・・詩織ィ」

これは夏に公と一緒にプールに行ったときのことだね。
公が飲み物を買ってきてくれている間に、私は公を驚かせようとしてウォータースライダーに乗ったんだよね。
あの時のあなたの驚いた顔!
私、今でも忘れてないわ。

 

「ねぇ・・・・・・まだ・・・・あるかな?」
「詩織?」
「ね、ちょっと来て来て!!あっ・・・まだあった!」

秋に公と一緒に近所の公園に行ったときだね。
いつもは遠出を選ぶあなたが、珍しく近所の公園に行かないか?って電話してきたのに驚いたのを覚える。
でも、あそこには2人の思い出がつまってるから・・・。
高校3年生となっていたあの時でも、全然退屈じゃなかったんだよ。

 

「キャッ・・・・」
「詩織。大丈夫だよ」
「でも・・・・・怖いわ」

冬に遊園地に行ったときね。
観覧車からの眺めが好きだって言ったあなたは、遊園地に行くと必ずいつも最初に観覧車に連れてってくれた。
でも、そのときは確か風が強くって、観覧車が頂上ら辺で止まってしまったのよね。
とにかく怖くて・・・・震えてた。
けど、あなたの腕に捕まって、あなたの頼もしさを改めて再確認したわ。
あの時、最後までいえなかった言葉は、卒業式までずっととっておいたんだよ。

 

懐かしいね。私たちの高校時代の思い出。
私たちは今までこうやって思い出を積み重ねてきたよね。
それは、きっとこれからも変わらない。

高校時代、あなたと幼馴染でいるのが嫌になったことがあった。
だって、幼馴染って言葉に縛られて・・・身動き取れなくなってしまったから。
そして、幼馴染ってことを逃げ道にしていたから。

でも、そんなのもう思ったりなんかしてない。
だって、ああやって幼い頃から一緒にいたから、今のあなたと私がいるの。

 

ふと、何となく気配がして私は少し重かったまぶたを開いた。

「公・・・・・?」
「あれ?起こしちゃった?」

見えたものは、少し照れくさそうにしているあなたの笑顔と、私の髪を撫でているあなたの手。

「ふふっ・・・人が寝ている間に何してるのかな〜?」
「いや、何か詩織がちっちゃい頃の詩織に見えて・・・・」
「ちっちゃい頃の?・・・・ふふふっ」
「どした?」
「今ね、夢を見てたの」
「夢?」
「そう。公との高校時代の夢だった。懐かしかったなー。色んな思い出がいっぱい」

そう言って、私は少し寝返りをうって伸びをした。

「高校時代かー。あの頃も楽しかったな。好雄やレイと毎日バカやって騒いでたっけ」

私の言葉に、あなたが懐かしそうに目を細める。ふふっ。たった4ヶ月までのことなのにネ。

「そうそう。それに、いっぱいの女の子と仲良くしてたわよねー」
「えっ!?しっ、詩織?」
「ふふっ。ジョウダンよ」
「驚かすなよ、全く。それに、詩織だって・・・・」
「ふふふっ。いいじゃない。あの頃の全部ひっくるめて、今の私たちに必要なものだったのよ」
「・・・・・・・ま、そうだけどね」

 

「ねぇ?」
「ん?」

少し身体を起こして、公の耳元へ口をもっていく。

「あのね?」
「うん」
「私・・・・あなたと幼馴染でよかった・・・・・・」
「詩織?」
「あなたを好きになって・・・・・よかった・・・・・・」
「詩織・・・・・・・。ってこらぁ!!こんな・・・・・感動的なシーンで寝るやつがいるかね?全くもう」
「ん・・・・・・すうすう。公・・・・」
「・・・全くもう。ホント、昔から何も変わってないな。・・・・俺だって、そうだよ。甘えん坊の詩織サン」

口唇に、何か暖かいモノが触れた感触がしたけど、私は知らないフリをしてそのまま眠った。
公の側で、私は深い眠りに落ちてようとしていた。

 

あのね・・・・公。
私、ちゃんと分かってるのよ?
何億万分の一の確率であなたとこうやって愛し合えてること。
それが、どんなに凄くて素晴らしいことかって。
そして、どんなに大切にすべきことかって。
私、ちゃんと分かってるの。
でもね、少し恥ずかしいから、口に出して言ってあげない。
あなたと私が、ずーっと一緒にいられるようになるまで・・・・

 

お・あ・ず・け・・・・ね?